日本の終身雇用について

日本の雇用

日本の終身雇用について

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今回も記事を書くのはMiuだよー!
ところでみなさんは「終身雇用」って聞いたことあるかな?今回はこの雇用制度について一緒に調べてまいりましょう!

「定義」
~終身雇用ってなーに~

よく耳にするのは「昔は終身雇用だったから、安定して生活できた…」とか、「すでに日本の終身雇用制度は壊れた」なんてことを聞くことがあると思います!それではまず「終身雇用」の言葉の定義について調べてみましょう!

フォントの歴史

〇定義
【終身雇用 しゅうしんこよう lifetime employment】
労働者をいったん採用すると、不況下においても雇用継続にあらゆる努力を行い、よほどのことがない限り定年(2009年現在では60歳かそれ以上)まで雇用を継続すること。
(「日本大百科全書(ニッポニカ)」より)

「文化的意義」
~当たり前だった時代がある~

つまり「基本的にクビにしない雇用」を“終身雇用”というのですね!

これは働き方や従業員の雇用する方法を意味するだけじゃなくて、とても「文化的な言葉」であることも面白い点ですっ

戦後日本の高度経済成長が始まる60年代から、バブル崩壊90年代まで「入社したら定年までひとつの会社に勤める」ことは社会常識であり、なんと法律も裁判所も「合理的理由」や「客観的理由」がなければ従業員を解雇できませんでした。

いわゆる日本の古き良き時代、戦後昭和の社会通念であり、みんなの当たり前だった時代がありました!

「特殊な雇用方針」
~ふしぎの国ニッポンのやりかた~

じつはこの「終身雇用」なる言葉をつくったのは日本人じゃありません!アメリカの社会学者さんが調査して本にした『The Japanese Factory』に記載されている日本の特殊な雇用制度についての紹介なのです!

「どのような水準にある日本の工場組織でも、労務者は入社にさいして、彼が働ける残りの生涯を会社に委託する。会社は、最悪の窮地に追い込まれた場合を除いて、一時的にせよ、彼を解雇することはしない」
(「日本大百科全書(ニッポニカ)」より)

80年代の日本経済黄金期に世界は「なぜ日本は戦争に敗れたにも関わらずビジネスの王者(GDP2位)となったのか?」と、日本と世界の違いに目を向けていろいろな研究と調査がされました。

「世界の雇用方針」
~使えない従業員はポイッ~

ところで会社……とは、何のためにある組織でしょうか?

社会学の言葉で「機能体組織(Gesellschaft)」「共同体組織(Gemeinschaft)」なるものがあります、これは目的や利益のために組織された集団なのか、それとも地縁や友情で結びついた集団に分類することができます。

会社とは利益追求集団です。「機能体組織(Gesellschaft)」である会社は、利益をもたらす従業員は厚遇し、利益を生まない者を排斥します。そのために重職である経営者や役員、プロジェクトに重要な人材には高い報酬が支払われます、そして必要だけれども替えの効く一般社員はコストを抑えるためにその報酬は安く抑えられます。そしてその両者も会社の求める成果が出せなければ、職責に関わらず解雇されます。

厳しい……ビジネスの世界厳しいですね!!(涙)

「雇用方針の合理的手段」
~裁判で負けてもクビにする日本IBM~

ビジネスは合理によって動きます。日本IBMは違法な解雇を行いしょっちゅう訴訟が起きている企業です。それは日本IBMが「わるい会社」だからではありません、「違法解雇で訴訟されても雇用継続するよりコスト的にお得じゃん!」と考えているからです。

利益追求集団、機能体組織である会社はその自身の目的のため、常に“合理的判断”が良しとされます。それであれば「よい雇用方針」とは「いつでもクビが切れる(有期雇用)」ものであり、「コストを抑える(低賃金かつ昇給なし)」ことが肝要ですね……(涙)

「終身雇用制度のメリット」
~世界に冠たるわが日本(今は昔)~

それにも拘わらず、90年代までの日本が強く終身雇用を方針としていたのはなぜでしょうか?世界でもっとも(経済的には)輝いていた日本はこの終身雇用をどのように活用していたのか?

終身雇用は基本的に「年功序列の賃金体系」と一緒に運用されます。これは能力に関わらず勤続年数に基づいて報酬が上昇して聞くシステムです。これが「終身雇用制度の最大のデメリット」であり、「最高の効力を発揮する要因」でもあります。

つまり従業員からすればどれだけ会社に利益をもたらしても給与に反映されません。そして会社から見れば、能力の低い従業員を継続的に雇用する経費は年々増大することを意味します。

しかしこのシステムは「直接的な利益」と「報酬と評価」を切り分けることに成功しました。そのため会社も従業員も短期的には利益とは繋がらないことにも注力することが出来たのです。

その“すぐに利益にならない”ものとは「人脈の構築」「業務スキルの共有」「基礎研究」「社員間、取引間の信頼関係の醸成」など目に見えないけれども利益の土台となるものです、そしてそのスキルや経験は、年を経るごとに高まり有能な忠誠ある従業員が社内に増えていくことを意味します。

こうして各部署を渡り歩いて教育を受けた従業員は、広くゼネラリストでありつつ高度に専門化、固く忠誠化、深く熟練化した営業職、事務職、研究職となり、そこからの生え抜きの管理職が会社を導いていきました。そして戦火の灰燼に帰した日本を不死鳥のごとく蘇らせたのです、そうロックフェラービルを買収できるほどには。

ゲゼルシャフトとゲマインシャフト
~日本人の特性~

日本人の特性として「集団への順応性」「組織への忠誠」があげられることがよくあります。日本人の共同体は信仰を基礎としておらず、その村落共同体は労働集約型である稲作であり、そして共同体構成員の生命は水田に流れる「水」に依存していました。この水を守るためであれば、日本の村は全てを賭して内に外にと戦います。

日本人の民族性のルーツである村落共同体は地縁で繋がっている「共同体組織(Gemeinschaft)」でもあり、“稲作の水を守るため”の「機能体組織(Gesellschaft)」の両者の機能をもつ『協働型社会』であり、それは現在の日本の社会や企業にもみられる特性です。

いわゆる“家族的感覚”による助け合いが日本企業の強さのひとつでした。困難にあっては本来敵対的である経営者と労働者が一致団結することで問題解決を図り他社を圧倒する。立場や身分に差があっても協力して対応していくことが日本企業の特性でした。

『「会社は家族」であり「労働は人生」である』ことはこの時代の日本人の特徴のひとつです。家族は従業員である夫が朝から夜まで労働出来るようにサポートし、会社は家族のために住宅手当、従業員の子のために就学金、慰労のための社員旅行など、会社と家族は不可分で一体の組織となっていました。歴史的にも「お家のため」「お国のため」と、所属組織と個人のアイデンティティが融合することを好むのが日本人です。

日本人は目的追求のための「機能体組織(Gesellschaft)」と友情や人情などの心のつながりである「共同体組織(Gemeinschaft)」は同一のものとなりがちであり、また好みでもあります。

「壊れる日本の終身雇用」
~正しいことは正解とは限らない~

しかし残念!

日本の終身雇用は令和の時代にあって
ほぼほぼ崩壊の様相を呈しています。

答えは簡単で、「日本人の得意とする画一的な大量生産大量消費の時代が終焉した」「終身雇用を維持するコストを日本企業が支払えない」「そもそも終身雇用するメリットがなくなった」からです!

時代が変わってしまった……そういってしまえばことは仕舞いなのですが「日本企業が終身雇用制度を辞めること“正解だ”」とは言い切れません。

ビジネス的合理の判断によって「従業員は利益(評価)をあげるべし」と強く打ち出せば、従業員は合理の判断に基づいて「利益(評価)なきものには取り組まない」となることは必然です。従業員は自らの利益を守るために、有用な情報を秘匿し、失敗は自分のせいではないと言い逃れ、自らに関わりない問題は目を向けず、ただ評価項目のみに注力することでしょう。いくら「愛社心を持て」「自分事としろ」と話しても、それは『自分の利益(評価)と関わりうることなのか』と、常に審査されます。

もちろん成果主義の効能を否定することはありませんが、日本人が好きな“家族感”“団体への帰属意識”をうまく用いた方が組織は機能的にまわるかもしれません!ほら、アルバイトよりボランティアの方が団体の参加者の意欲も作業量も高くなることはみなさん知っての通りです!(笑)

「冗長性が組織の生存性を高める」
~働きアリとYAGIアンテナ~

「余裕は大切!」というお話ですっ

採用コストも高く無駄も多いのが終身雇用制のデメリットですが、この「無駄が多い」ことが組織を生き残らせるために重要な要素であったりします。

「働きアリの法則」として全体20%のアリさんがよく働き、下位20%は全然働かない!なんてお話はどこかで聞いたことかと思います。それだけ聞くと「じゃあ、働きアリだけ抽出した100%働きアリ集団をつくればいいじゃん!」と思ったそこの貴方の巣は滅びます!!(断定)

最近の研究結果によると、働きアリが休止しているときや、緊急性の高い事態(敵の襲来など)に働かないアリは投入されます。また餌までのルート通りに歩くことが出来ないアリ、これまで「無能なアリ」と認識されていたものは、巣から餌までの既存ルートから外れることで、より最短ルートを探し当て(生存性の向上)それを仲間に伝える役目を担っていることがわかりました。

無駄だと持っていたことは、実は組織効率化のための行動だった……とのことですね!

別のお話にはなりますが先の戦争で日本は連合軍に大敗しました。その理由の一つである技術的格差に「無線・レーダー技術」というものがあります。日本軍が海で空でと敗れた要因に「敵より早く存在を見つけることができなかった」ことがそのひとつで、その技術がレーダー技術でした。

日本海軍は優秀な乗組員の目視による観測に秀でていましたが、夜や霧などの気象条件においてはこの光学探知は役に立ちません。そうした時に役立つのがレーダー技術であり、今ではひとの目よりのより遠くまで正確にモノを見つけることができます。

そして連合軍のその優秀なレーダー装置の名前は「YAGIアンテナ」と言い、戦争が始まってから日本軍士官が捕虜となったイギリス士官に「この“YAGI”って何?」と尋問をして「え……、日本人の八木博士が開発したアンテナだけど?」と判明する始末。

正面装備(銃や大砲など)ばかりに予算を投じて、それを運用するための周辺機器に開発できなかった敗北の歴史です。もっともそもそも日本軍の予算が英米より少ないということもありますので、やっぱり予算の大きさは正義ですね!

「終身雇用のまとめ」
~高コストな家族感企業システム~

終身雇用とは何かと問われれば「高コストだけれども冗長性を特徴としたやや旧時代のシステム」だと言えるでしょう!

すべての従業員の定年までの究極的超長期雇用と年功序列型賃金体系のとんでもなく高コストの雇用方針ですが、その代わりに従業員は会社を「一心同体の共同体」であると捉えて、会社に忠誠をもち尽くしてくれます。

しかし昔と異なり国内だけの競争ではなく、情報と物流のグローバル化にともなう「対全世界との競争」の現代のビジネススピードは加速度的に早くなるばかりで、それについてこれるような体制とは言い難い……が、単に成果報酬型に変えても日本人の気質に合うかどうか難しい。

ひと昔である戦後昭和には当たり前だった、ある意味古きよき時代のロマンであり文化の香りがする雇用システムであり、大規模アップデートは必至!

1500 844 Miu Nolan

Miu Nolan

Hi! I'm Irish/Japanese Writer, Copy Writer, Designer, working in Odo's Börte Design :)

All stories by : Miu Nolan

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